ファジィ理論で「あいまいさ」を含む人間の知識を計算処理し、工学的立場から積極的に応用することに重点をおいて研究を行っています
すがの なおとし
菅野直敏

人間の主観や思考過程を定量的に取り扱うことのできるファジィ理論を用いて、「あいまいさ」を含む人間の知識や経験をシステムに組み込む研究を行っています。特に、色彩のあいまいさに関する内容、あいまいさと広くソフトコンピューティング(ファジィ理論、ニューラルネットワーク、ジェネティックアルゴリズム、カオス、フラクタルなどの手法)に関連する内容について研究を進めています。日本知能情報ファジィ学会、バイオメディカル・ファジィ・システム学会、日本感性工学会、日本建築学会、電子情報通信学会、IEEE(米国電気電子学会)の各会員

現在までの研究概要(2010.1)

1)色彩の順序が人に及ぼす効果
色彩感覚の分析において数種類の色の提示を行い、その色彩の時間的な変化の影響を調べました。その結果、同一色(数色)でミニマムな(RGB色立体中で各色を一周する距離が最短な)系列とノンミニマムな(距離が最短ではない)系列に対する感覚は明らかに異なります。また、「自然」と「不自然」の形容詞にその系列のイメージが当てはまるかどうかの違いは、各系列の赤緑青成分の近い値の組数と関係があり、明暗や濃淡とはあまり関係ないことが分かりました。ミニマム系列は色相角度のほぼ大きさの順に並んでいます。また、虹色の順がミニマム系列に近いものであるならば、色彩感覚の「自然」と関係があると考えられます。そこで、各色の色相と彩度で与えられる(白黒軸方向に)射影したルートから得られるルートエリア(ルートで囲まれた面積)を用いた人間の色彩感覚モデルを提案しました。これらを基にしたモデルシミュレーション結果は色彩距離が最短か、それに近いと「自然」と感じるが、それら以外ではほぼ「不自然」と感じることを示唆しています。この自然さの程度をルート距離だけで説明することはできませんが、射影したルートから得られるルートエリアに依存することが明らかになりました。このような時間的な色彩系列による結果は空間的な色彩系列による結果と同じ傾向を示しました。現在、ルートエリアとその複雑度を使った人間の色彩感覚の簡単なファジィモデルを作り、系列から平面へ拡張する研究をしています。

2)表色系のファジィシステム
<ファジィカラーシステム>
色度図に対応したカラートライアングルにファジィ理論を適用して、加法混色の考え方から三角錐台のような形状のメンバーシップ関数(red、green、blue)を作り、ファジィ推論(近似推論)することによりファジィカラーシステムを構築することができます。カラートライアングル上にも、また変換することで色度図上にも、ファジィ推論の出力結果を示すことができます。
<ファジィトーンシステム>
 同様にトーントライアングルに適用して、加法混色の考え方から三角錐の3つの異なるメンバーシップ関数(not black、white、light)を用いてファジィ推論(近似推論)することによりファジィトーンシステムを構築することができます。また後件部はカラートライアングルを用います。つまり、ある色相のトーントライアングルからカラートライアングルへ写像することができます。
将来、これらのシステムは工業製品や芸術作品や被服などの重要な色彩情報(たとえば、色彩のあいまいさや色彩のわずかな変化)を確かめるのに役立つことになると考えています。

紀要_ファジィ色彩応用改.pdf


AFTジャーナルvol.45_p7_色彩ファジィ理論_3rd.pdf

担当講義科目

工学部:
工学導入セミナー、情報理論、ディジタル回路、情報電子回路、ソフトコンピューティング
工学専門実験T、知能情報システムラボW、知能情報システムセミナー

大学院工学研究科:
人間情報論、ファジィ情報論、ファジィシステム論、知能情報科学研究サーベイ、知能情報科学研究企画・方法論、知能情報科学分析・モデリング、知能情報科学論文構成・表現法、知能情報科学研究セミナー

卒業生の千葉祐子さんのメッセージ  学科賞2006受賞

感性メディア研究室では、あいまいな色の研究や表情・音声から感情を分析する研究を主に行っています。わたしがこの研究室に入ったきっかけは、日常にあふれている「色」とはいったいどのような情報を持っているのだろうと思ったからです。「赤」と言っても、人によって「赤」と感じる色が違うように、色はあいまいな情報でありながら、そのあいまいさを突き詰めて研究を進めていくと、無限に可能性が広がるものを持っていると感じました。学会発表など様々なところで自分を成長させるチャンスもあるので、研究も向上心を持って意欲的に取り組めます。研究室の菅野先生は、こまめに相談にも乗ってくださる、頼れる良き先生・良き先輩です!

長岡優季さんの抱負

私は菅野先生のゼミに入っている。先生は「ファジィ」について研究なさっているので、私も秋学期から少しずつファジィの理論について学ばせていただいている。私にとって、ファジィは工学の勉強のひとつとして結果的に知りえたものであったが、その考えはとても新しくおもしろいので、毎週のゼミや授業時間は楽しみだ。今年は人の表情と音声をテーマに研究なさっている方がいるが、私はそれにさらに「人のジェスチュア」というものを加えて考えてみたいと思っている。私は本を読んだり、演劇を見るのが趣味だ。これらには必ず無くてはならないものがある。それは想像力だ。というのも、どちらも少しの状況説明や情報をもとに、自分の頭の中で枝葉を広げて足りない部分を補わなくてはいけないからだ。自分はその話しを読んでいる限り、物語世界には絶対に入れないから、直接作者に会う以外に、わからないことを解決する方法は無い。このように想像力はその世界の状況や状態をしるのに無くてはならないものである。ならば人間の行動というものも想像力によってなりたっているのではないだろうか。ジェスチュアというのは言葉よりも、その国柄や地域柄によって種類が在り、同じ動作でも違うコミュニケーションに用いるジェスチュアは、外国でも日本でもあまり大差は無いような気がする。たとえば「手招きをする」とか「腕を組む」とかは世界共通だとおもうし、もちろん国別に別の仕様のソフトを作れば何も問題は無い。ジェスチュアは言葉にならない部分をもっと理解してもらいたいと思ったとき、身振りや手振りで補おうとして発生するものである。行う人と見ている人との間に想像力が働いているといえる。まだまだファジイについては知らないこと・学ばなくてはいけないことが多いし、どのような展開をすればこれが工学の学問として結びつくかわからない。だけど今年はこのようなテーマでがんばってみたいと思う。

玉川大学大学院工学研究科博士課程修了
玉川大学工学部電子工学科に勤務
現在、工学部教授・大学院工学研究科教授

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sugano@eng.tamagawa.ac.jp